長期に透析をおこなっていますと、透析ですべての尿毒症物質が除けるわけではないので、ある種の有害物質が慢性的に影響し、いろいろな合併症として現れてくることがあります。

動脈硬化

動脈の内側に脂肪やカルシウムが沈着すると動脈の内径が狭くなります。一般に動脈硬化の危険因子として知られているのは高血圧、喫煙、高脂血症ですが、透析患者では尿毒素、Ca・P代謝異常、体液量の増加などが動脈硬化の促進に影響しています。動脈硬化が進むと心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。

貧血

透析患者において貧血の最大の原因は造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)の産生障害です。現在ESA製剤の使用でほとんどの患者さんで改善がみられますが、中には、ESA製剤に対する反応が悪い例や効かない例も存在します。逆にESA製剤の使用でHct(ヘマトクリット:血液全体に対し赤血球が占める割合)が上昇しすぎてシャントの閉塞が起こることもあります。

心不全

心臓のポンプ機能が低下して体に必要な血液を送り出せない状態を心不全といいます。体の中に過剰な水分がたまった状態が続くと心臓に負担となります。尿毒症による心筋障害や高血圧なども心不全の一因で、貧血も長期にわたると心拍出量の増大から心臓に負担がかかります。シャント血流が多い場合にも心臓に還る血液が多くなって負担がかかります。予防には、水分・塩分の制限、体重・血圧のコントロールが重要です。

骨病変

Ca・Pの代謝障害や活性型ビタミンDの不足による二次性副甲状腺機能亢進症から線維性骨炎が起こり、骨からカルシウムが溶けだし骨折しやすくなったり骨・関節痛がでてきます。

アミロイドーシス

長期に透析をしている人では、β2-ミクログロブリンという物質が関節や骨に沈着します。
手首にアミロイドが沈着して神経を圧迫し、手の親指から中指にかけて痛みやしびれが出たりするのを手根管症候群といいます。手根管症候群は、症状がひどくなれば手術の必要があります。

感染症

透析をしている人は一般に感染に対する抵抗力が低下しています。風邪をこじらせておこる肺炎や、尿路感染、結核などがあります。

長期に透析を続けているといろいろな合併症が出現してきます。医学が進歩して、ダイアライザーの性能も進歩し、新しい治療法や薬が開発され、合併症も克服されつつありますが、患者さん自身の努力で防げる合併症も多くあります。Ca・P、水分、塩分、カリウムなど食事療法でコントロールできるようになれば、合併症の出現も減ってくると思います。